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裁判員制度に備えて。いざ、傍聴体験

2009年5月といえば、いよいよ「裁判員制度」がスタート。というわけで、リアルな法廷の様子を肌で感じることができる「裁判の傍聴体験」に繰り出してみた。

※場所の性質上、再現イラストにてお届けします…。

敷居が高そうだけど、裁判所に入るのは意外とカンタン。

 今回訪れたのは、東京・霞ヶ関の官庁街に佇む「東京高等裁判所(東京高裁)」。最初に断っておくと、裁判の傍聴に面倒な手続きや準備は一切必要ない。ブラッと最寄りの裁判所に出かけて、自分好みの裁判を見る、というスタンスでOKなのである。もちろん無料だ。

 ちなみに今回向かった東京高裁は、地上19階・地下3階建のビルの中に150を超える法廷を備えており、「東京地方裁判所」「東京簡易裁判所」「知的財産高等裁判所」との合同庁舎になっているというマンモス裁判所だ。お目当ては、その中の東京地裁である。…ここで一言、傍聴ビギナーには断然「地裁」をオススメしたい。その理由は、事件の種類がバラエティーに富んでいること、傍聴券の抽選などの煩わしさがないことが挙げられる。(大きな事件になるほど、傍聴席の倍率も高くなるのだ。)

 さて、庁舎の入り口では、ボディチェックと荷物のX線検査が待っている。空港でおなじみのアレである。初めてだと緊張するかもしれないけど、こうして中へさえ入ってしまえば、基本的に後の行動は自由。では何を元にして傍聴する裁判を選べば良いか、というと…。

 

「開廷表」で情報を集めたら、本日の傍聴予定を決定。

 真っ先に向かうのは、入り口を入ってすぐ目の前にある案内カウンター。そこには、「開廷表」と呼ばれるファイルが幾つか置いてあり、このファイルこそ、傍聴体験の正否を分ける重要なキーである。

 ファイルは、民事裁判・刑事裁判・高裁での裁判というように、裁判の種類ごとに存在する。そして中を開くと、裁判が行われる数多の法廷(部屋番号)ごとに、その日行われる公判の概要とそのタイムスケジュールが記してあるのだ。(傍聴ビギナーは、まず刑事事件のファイルから見るのがいいだろう。)

 ポイントになるのは、個々に記載されている「窃盗」「傷害」「恐喝」「詐欺」「名誉毀損」といった罪状の種類と、同じく記載されている〈新件〉〈審理〉〈判決〉の文字。基本的に、傍聴人はこれを便りに、自分が興味のある事件を傍聴していくことになる。基本的に、裁判は1回で終わることはなく、審理を重ね、最後に判決が言い渡される流れとなっている。〈新件〉ならば、それが初公判であることを表し、〈審理〉とあれば、2回目以降の公判であることを表す。〈判決〉は、文字通り判決が下される公判であることを指す。

 つまり、事件の概要を把握し、裁判の行方をしっかり見届けるためには〈新件〉からの傍聴が基本となるわけ。ちなみに時間の目安としては、新件で約1時間程度、審理は1〜2時間程度、判決は10分程度と考えておけばいいだろう。こうしたことを計算しつつ、自分の傍聴体験の“時間割り”を考えるのも意外と楽しいのだ。

この日体験した裁判を、軽く振り返ってみる。

 この日、私は昼イチから東京地裁に入り、以下の4つの裁判を傍聴した。まあ、詳しい内容は割愛するけれど…。

○ 公務執行妨害(新件)

 開廷の5分前に法廷に向かったら、まだ開いてない。仕方なく、廊下に面したドアの前で、他の傍聴グループとおぼしき若い男女と一緒に待つことに。いざ鍵が開いて中に入ると、彼らはこれから始まる裁判の被告と身内(証人)だったと気付く。法廷の大きさは大小さまざまあり、入り口がひとつしかない小さな法廷だと、こんなこともあり得る。(通常、傍聴人と関係者の入り口は分かれている。)
  ちなみに事件は、酔っぱらって警察官ともみ合いになったというもの。。う〜ん、さっき間近で見た時はそんな青年には見えなかったけど。酒の力は怖いものだ。

○ 強制わいせつ(審理)

 開廷表にこの手の罪状が記されている場合、その大半は電車内での痴漢行為である。「痴漢冤罪」が物議を醸している昨今、妙に緊張してしまうテーマではある。もっとも、この被告の場合は同じ容疑で捕まるのも2回目だというから、もはや同情の余地はない。力なくうなだれる被告を見つめながら、絶対に罪は犯すまい、と改めて自分に言い聞かせる…。

○ 窃盗・詐欺(判決)

 被告は20代半ばくらいの男性で、初犯。一見、マジメな若者にしか見えないが、犯した罪は、会社の同僚のお金をくすねて服を買い漁ったという大胆なもの。ちなみに、この裁判で傍聴席に座っていたのは、事件とは何ら無関係の私一人。法廷内の全体像や裁判の様子をつぶさに見ることができたけれど、妙に緊張してしまったのも否めない。

○ 迷惑防止条例違反(判決)

 こちらも罪は電車内での痴漢。被告は同じ罪で前科2犯だったこともあり、懲役6ヶ月の実刑に。ちなみに、判決は10分程度で終わってしまうが、裁判官が判決の理由となる主文を読み上げる際、事件のあらましにも再度触れるため、概要は知ることができるのだ。

最後に 裁判員制度がスタート…

 5月21日からスタートした、裁判員制度。そのねらいとしては、「一般市民の感覚や常識を裁判の判決に反映する」「司法に対する国民の理解と信頼を促進する」「なかなか進まない重大事件の裁判を迅速化する」などが挙げられている。多くの先進国で既に採用されている制度ではあるけれど、日本でうまくいくかどうかは、正直なところまだ未知数。いずれにせよ、人の一生を左右しかねない役割である以上、生半可な気持ちでは挑めないことは想像できる。

 法務省では、1年あたり「約5,000人に1人」の国民が裁判員に選ばれると試算している。おいそれとは当たらないけれど、絶対にないとも言い切れない、ビミョウな確率。だからこそ、もしも自分が裁判員に抜擢されたら、と考えてみてほしい。いざという時にオロオロしないためにも、ナマの裁判の雰囲気をあらかじめ知っておくのは、とても有効なはず。だからこそ、今回のような傍聴体験は決して無駄ではない…と思うのだ。